教職支援
教育フィールド研究
地域を基盤とした教員養成モデルを開発し、「子ども体験」の深化をめざす
都留市と都留市教育委員会の協力の下、市内小中学校、学童保育において「教育フィールド研究」(1,2,3,4)を実施することで、(1)子どもに関わる身体と感性の涵養、(2)多様な子どものニーズの理解、(3)現実の教室場面のイメージ形成、(4)学力不振児童・生徒に対する指導体験を進め、重層的な「子ども体験」にもとづく実践的指導力を持つ教員を育てる。
また、この事業を通して大学と小中学校との協力・連携を強めるとともに、現職教員に対しての研究的支援・学習機会の提供を行う。これには大学と学校現場とが共同し、地域をベースにした実践・研究を発展させるためのケース・カンファレンスをはじめとする研究協議会の開催も含まれている。
これらの運営にあたってはSAT運営委員会を設けて、都留市教育委員会・大学・小中学校の三者が協力して行うこととしており、このような学校間連携・ネットワークの構築も地域を基盤とする新たな教員養成モデルの開発として位置づける。
概要
- 教職支援センターのコーディネートと学部教員の指導の下で、学生アシスタント・ティーチャー(SAT)活動と学童保育支援とを都留市内の小中学校と学童保育所で実施する。
- 地域をベースにした実践・研究を発展させるためのケース・カンファレンスを開催する。
- 都留市教育委員会・大学・小中学校の三者による学校間連携・ネットワークを構築する。
本プログラムは以下に要約した3点を主たる目的としながら、全体として「地域に根ざした教員養成」の新たなモデルを開発しようとするものである。
1.児童生徒への支援と学生への教育効果
学童保育支援、学生アシスタント・ティーチャーによる放課後学習支援や、「困難」を抱える児童生徒の個別支援等により、学童保育や小中学校での子どもひとり一人に応じたきめ細やかな指導を充実させる。
- 「教育フィールド研究1」(学校教育学科1年生必修)
教職支援センターのコーディネートの下で3~9名のグループに分かれ、都留市内8カ所の学童保育で通年の支援体験を行う。大学では、20~25名程度のクラスで学部教員の指導の下、体験の振り返りと考察を行う。教育者と被教育者という関係以前に子どもとかかわり、一緒に遊べる身体と、子ども理解の感性を涵養する。 - 「教育フィールド研究2」(学校教育学科2年生選択)
教員免許取得希望者は、2年生で「介護等体験」が必修となっているが、それに加えて「教育フィールド研究2」を選択した学生は、学部教員の指導の下、地域の知的障がい、発達障がいのある子ども達を集めて週末に大学キャンパスにおいて行うクロボ活動や、特別支援教育活動に参加する。それによって子どもたちの多様なニーズを実感することができる。 - 「教育フィールド研究3」(学校教育学科3年生必修、他学科で教員免許の取得を希望する3年生選択)
主に9月に行われる教育実習をはさみ、教育実習事前・事後指導とタイアップして、通年でSAT-B活動(授業支援) (一部の学生は、SAT-C活動(特別ニーズ支援))を行う。それにより、教育実習の準備と、教育実習を経て確認された課題の補強に、教室で行われている実践に学びながら取り組むことができる。 - 「教育フィールド研究4」(各学科で教員免許の取得を希望する4年生選択必修)
教員免許取得予定者は4年生後期に必修となる「教職実践演習」の一形態として、学校現場でSAT-A(放課後学習指導) (一部の学生は、SAT-C活動(特別ニーズ支援))に取り組み、実践的指導力の基礎を仕上げる。SAT-A自体は通年で実施する。大学では、放課後指導の事例報告をもとに、大学教員を含むグループでカンファレンスを行う。それによって、自らの指導上の弱点を補強すると同時に、実践研究の初歩を体験し、現場研究者としての教師の基礎を身に着けて教職に向かうことができる。
以上により、学生は、学校内外での多様な子どもの姿に接し、本学が教員養成の軸としている子ども理解を深めることができる。また、大学での振り返りとカンファレンスを通して、講義・演習で学んだ内容と現場の実態とを往還的に理解し、実践的指導力と、現場での実践研究の基礎を身に着けることができる。
2.新たな教員養成の展開
教育現場と連携した教員養成のあり方を探求・発展させる。とりわけ、学生が「現場」で生起するさまざまな問題や課題を自ら体験することを通じ、それらを研究対象とする際の方法論の研究・開発と教育・学習を学部教育全体のなかに位置づけることによって、「教育実習」へのスムーズな導入や「教職の意義」等の実践的な理解が期待できる。また、特に教育フィールド研究4では、大学教員が、児童・生徒に対する指導について学生と共に行うカンファレンスから、学校現場の実態に即した研究テーマを設定し、実証する研究の手がかりが得られる。そうした研究の成果をフィードバックすることで学部および大学院の教育を充実させるというサイクルを形成する。
以上から、本学では、教育と研究とが共に学校現場と結びついた理論と実践の往還をなすものとして形成される。
3.教育現場への貢献
学童保育の支援、特別ニーズ教育の支援、小中学校での授業支援、放課後学習支援に学生を派遣し、児童・生徒の対応に当たらせる。学生によるレポートやポート・フォリオは、児童・生徒に対する学生の指導・支援のあり方について大学教員とカンファレンスを行う資料とするほか、現職教員が児童・生徒理解をする際の手がかりとなる。さらに、小中学校おけるスクール・カウンセラーの配置や特別支援教育の展開等と連動させながら、大学と小中学校との共同を進める。
運営体制
1.都留市SAT運営委員会
市内小中学校・都留文科大学・都留市教育委員会でSAT運営委員会を設置し、年度ごとに計画立案・実施・総括を行う。全体会は、基本的に年2回実施し、SATの改善に向けた率直な意見交流を行っている。
2.大学における運営体制
大学は、教職支援センターが、運営委員会との窓口となっている。主には学部からの依頼を受けてSATに関する日常的な連絡調整、各種手配、学生指導、緊急対応を行っている。また、SATを含んで実施される大学授業科目としての各「教育フィールド研究」では、クラス毎に学部教員が配置されており、カンファレンスをはじめとする内容面の指導を行うほか、学校や教職支援センターと連絡をとりつつ、全体にわたる責任を負っている。。
3.小中学校における運営体制
活動の現場となる小中学校ではこの学校の担当教員が中心となってSATをサポートする。SAT-Aには、各校の指導員が付き、日常的連携と共に非常時対応に備えている。また、市の教育研修センター相談員も順次巡回支援している。
担当者会議
SAT 学生の活動の深化や、SATを位置づけた実践を発展させるために、この小中学校SAT 担当者と都留市教育研修センター相談員、大学担当者による担当者会議を実施予定(とくにBタイプ)している。