研究室 & ゼミ紹介(比較文化学科)1
更新日:2021年3月26日
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比較文化という学問は、人の心の中の境界線をもう一度見直し、解きほぐす学問だと思います。
齊藤 みどり 先生
私は、カリブ海域文学、ポストコロニアル(植民地主義や帝国主義に関わる文化・歴史などの批評・評論)文学、植民地主義とジェンダーなどについて研究しています。
カリブ海域文学、ポストコロニアル文学の研究に足を踏み入れたきっかけは、実は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)なんです。私は山口県の出身。島根県との県境に近い山村なので、小泉八雲の作品には小学校の頃から親しんできました。小泉八雲は日本に来る前、カリブ海にあるマルティニークという島で2年間を過ごし、さまざまな取材をしています。マルティニークの女性と日本人女性に向けたまなざしが似ていたこともあり、カリブの文化に興味を持ちました。その後ジーン・リースという作家の『サルガッソーの広い海』という作品に出会い、衝撃を受けることになります。この小説では奴隷農園の所有者の娘であったジーン・リースを模した主人公を通して、植民地主義やジェンダー、家父長制、現地の人との関わりなどが描かれています。私の母方の祖父は朝鮮総督府で働いており、植民者としての歴史を持っています。母も日本の植民地主義を肯定する考えを持っており、私はそうした考え方が受け入れられず、母とはケンカばかりしていました。そうした、小さな頃から自分の家族の歴史や意識について抱えていたもやもやとしたものが、この『サルガッソーの広い海』に全部集約されている気がしました
高校生の皆さんから、比較文化という学問はどんな学問かと聞かれることがよくあります。私は人の心の中にある境界線、地理上の境界線や男女の境界線、人種の境界線をもう一度見直し、解きほぐす学問であると思います。