公立大学法人 都留文科大学

Think Globally, Act Locally

比較文化学科

研究室 & ゼミ紹介7(比較文化学科)

更新日:2024年5月1日 ページ番号:0010983

授業風景

文学を通して世界を学ぶ

齊藤 みどり 先生
齊藤 みどり 先生

 私の専門は比較文学、そして英語圏のポストコロニアル文学です。最近の研究テーマは、カリブ海地域の女性作家の作品を中心に植民地主義とジェンダーについて考えることと、カリブ海域にルーツを持ち、英国に渡った作家の作品を考察することです。研究の対象となるカリブ海域という地域は、かつての西欧の列強がその占有をめぐって争い、また多くの人々がアフリカから奴隷として送り込まれた場所です。アジアからも、契約労働者として多くが海を渡りました。このように、さまざまな場所とのつながりを持つカリブ海域に生まれた文学は、世界の響きをもつ越境的な文学です。多様性を肯定するカリブ文学の研究は、日本における共生社会を考えるうえで何かを教えてくれるに違いないと信じています。
 文学は、実は資本主義や帝国主義と深くつながっています。一見無害なものに思われる小説や詩というメディアは、植民地主義の拡大に加担し、国民国家の形成にも関わりました。その一方で、世の中の不正や不平等を訴える手段として、文学は力のない者たちの味方でもありました。たとえば奴隷制廃止の実現を導いた『アンクル・トムの小屋』のように、文学には世界を変える力もありました。
 ゼミでは、私が専門とする作品ではなく、学生たちに読みたい作品を選んで読んでもらっています。近年は、『赤毛のアン』などの少女小説や、『シャーロック・ホームズ』などが学生には人気ですが、一見カリブ海域の文学とは無関係に思えるこのような作品も、植民地主義やジェンダーといった観点から分析することが可能です。ゼミでは、国や言語の違いにとらわれることなく作品を読み解くことができるように、文学批評も学びます。
 文学作品は、自分では知り得ない物語を教えてくれ、読む者に物事に対する新しい視座と、生きる力を与えてくれます。比較文化学科のなかでは少々異色な文学ゼミですが、文学作品の持つ力を学生と味わい、楽しむことができたらと思っています。